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ニットとは何か?を3代に渡って問い続ける会社、米富繊維。

1 日前
読了時間: 5分

今年の3月、インスタグラムで一枚の写真に手が止まりました。


「リジッドカシミア」。


硬くて、丈夫で、家で洗えるカシミア。


あれ?カシミアって、軽くて柔らかくて暖かい、繊細な最上級のニットのことじゃなかったっけ。その真逆を狙って作られたニットが、目の前にありました。


こんなん、変態やん(もちろん、誉め言葉)。


こんな凄いもの、どこの会社が作ってんねん?と調べてみると、山形県にある老舗ニットメーカー、米富繊維株式会社でした。


米冨繊維の本社工場がある山形県山辺町の田園風景
山形県東村山郡山辺町。日本有数のニット産地として知られるこの地に、米富繊維の本社と工場がある。(画像提供:米富繊維株式会社)


米富繊維とは、どんな会社か。


米富繊維株式会社とは、1952年に山形県山辺町で創業した、ニット製造に特化した老舗メーカーです。


素材開発から編み立て、縫製、仕上げまで、すべてを自社ファクトリーで一貫して行っています。国内外の有名ブランドのOEM生産を数多く手がけながら、

・COOHEM

・THIS IS A SWEATER

・YONETOMI

という3つの自社ブランドも展開しています。


ただ、経歴を並べただけでは伝わらないものがあります。調べていくうちに、どんどん引き込まれていきました。



「ファッションは生活なり」という言葉。


創業者・大江良一氏が遺した言葉があります。


「ファッションは生活なり」


これ、実は彼の自伝のタイトルそのものです。暮らしと装いが密接に結びつき、ひとつの文化を形成しているヨーロッパを視察したときに生まれた言葉だそうです。

その自伝には、こんな一節もあります。

新しい素材があると聞けば先駆けて取り入れ、新しい製品づくりに積極的に励んだ。設備は常に業界に先駆けて新設、導入を続けてきた。それは新し物好きでも奇を衒うものでもない。良いモノを、良い環境の下で楽しく明るく産み出したいからだった。

この文章を読んだとき、正直しびれました。


新しいものに飛びつく理由が、「流行っているから」でも「目立ちたいから」でもない。良いモノを、良い環境で、楽しく明るく作りたいから。ものづくりの動機として、これ以上のものがあるでしょうか。


この「ファッションは生活なり」という言葉。私にとっても、座右の銘になるくらい響きました。



米冨繊維が扱う多種多様な糸のコーン
国内はもとよりイタリアや中国の産地へ足を運び、自らの目で確かめた原料を世界中から手配している。(画像提供:米富繊維株式会社)


産地全体を引き上げた、創業者の判断。


もうひとつ、米富繊維という会社を調べる中で、痺れた話があります。


かつて「ニットは夏に着られない」というのが業界の定説でした。米富の創業者はそれを覆すために試行錯誤を重ね、2年かけてサマーセーターの製法を生み出します。


普通なら、自社だけの武器として囲い込むところです。でも彼は、その製法を産地内に潔く公開しました。そして山形全体の展示会にこぎつけた。自社の利益より、産地全体が豊かになることを選んだわけです。


米富繊維が山形ニット産地のリーディングカンパニーであったことを示すエピソードとして、公式サイトに記されています。



米冨繊維が開発してきたニットテキスタイルのアーカイブ
これまでに開発したテキスタイルのアーカイブは数万枚を超える。この蓄積が、新しい編地を生む土台になっている。(画像提供:米富繊維株式会社)


今も変わらない、問い続ける姿勢。

会長の大江富造氏の言葉も、公式サイトに掲げられています。

より高品質に より高感度に より目新しく より洗練され 進化し続けること

そして創業者・大江良一氏が記した、こんな問いも。

ニットとは何か? を考えることが問われている

70年以上前に投げかけられた問いが、今も現場で生き続けている。だからリジッドカシミアのような、常識をひっくり返すニットが生まれるんだと腑に落ちました。


米冨繊維の編機へ送り込まれる糸
編機へ送り込まれていく糸。「ニットとは何か」という問いは、今も現場のあちこちで生まれ続けている。(画像提供:米富繊維株式会社)


3代目が、家業を継いだ理由。


現在の代表は、創業者の孫にあたる大江健氏です。

もともとセレクトショップのトゥモローランドで働いていた方で、当時は家業を継ぐつもりはまったくなかったそうです。2000年代はインポートブームで、海外のファクトリーブランドが飛ぶように売れていた時代。でも地元から聞こえてくるのは、工場の倒産やリストラの話ばかり。


「ものづくりでは絶対に負けていないのに、どうして日本のファクトリーはダメなんだろう?」


その疑問が、帰郷の動機になります。2007年に山形へ戻り、2010年に自社ブランドCOOHEMを立ち上げました。当時はまだ「日本のファクトリーブランド」という概念すらなく、風当たりも強かったそうです。


良一氏、富造氏、健氏。3代に渡って、この会社は同じ問いを持ち続けています。


米冨繊維のローゲージ編機による編み立て工程
ローゲージに特化した編機。ここまでローゲージに振り切った工場は、世界的にも珍しい。(画像提供:米富繊維株式会社)


なぜ、フナナカ洋装店で扱うのか。


調べれば調べるほど、この会社の姿勢に惹かれました。

常識を疑う。産地全体のことを考える。問い続けることをやめない。そして何より、「ファッションは生活なり」という言葉。


衣食住という言葉があります。人が生きていくための基本であり、その土地の気候・歴史・価値観が形になった、文化そのものです。でも現代は「着れたらいい、食べれたらいい、住めたらいい」になりやすい。


だからこそ、70年以上前に「ファッションは生活だ」と言い切った人がいて、その精神が今も現場で息づいている会社のニットを、フナナカ洋装店で扱いたいと思いました。


ちょうど弊店でニットを探していたタイミングでもあり、早速アポイントを取ると、26AW展示会の直前だという。これまた縁を感じてしまいました。



そして展示会で、実物のリジッドカシミアに触れることになります。

その話は、また別のブログで。


フナナカ洋装店

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