天然素材だけが、経年変化する。
- 6月19日
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化繊は、最初が完成形。
化学繊維は人工的に作られる均一な素材です。染料の吸収率に個体差が出にくく、品質が安定しています。安定した大量生産が可能で、機能性も高い。速乾性・耐久性・形状安定性など、化繊にしかできないことはたくさんあります。
ただ化繊には、ある特徴があります。最初が完成形だということです。新品のときが一番きれいで、そこから着込んでいくほどに劣化していく。これは化繊が悪いという話ではなく、化繊という素材の性質です。
天然素材は、最初から不揃いです。

コットンやウールのような天然素材は、化繊とは事情が違います。
そもそも原材料の時点から品質にばらつきがあります。綿花は産地によって特徴が異なり、気候・水・風土・栽培技術によって独特の風合いが生まれます。米綿は油分が少なくシャリ感がある、中国綿は手摘みで不純物が多くなりやすい、といった違いがある。同じ綿種でも、収穫された年度によって品質が変わることもあります。
天然繊維は元々真っ白でもありません。自然由来の不純物が含まれており、紡績や織布の工程で油剤や糊剤も付着します。これを精練・漂白して土台を整えてから、染色の工程に進みます。
ばらつきのある原料を、品質として揃えていく工夫もあります。たとえば日本の紡績工場では古くから、複数の綿種をブレンドする「混綿」という技術が培われてきました。原料となる綿をほぐして不純物を取り除き、複数の綿を混ぜ合わせることで、糸の太さや品質を均一に近づけていく。これはコストや品質を安定させるための優れた手法ですが、裏を返せば、もともとは均一ではない原料を人の手と技術で整えているということです。
タレントのアンミカさんが、白という色だけでも200通りあると語って話題になったことがあります。色を見分け、扱うことがいかに繊細な作業かを表すエピソードです。天然素材の世界でも事情は同じです。同じ「白」「グレー」「ベージュ」に見えても、原料のわずかな個体差によって染め上がりは微妙に異なります。それを工場の技術と経験でフォローし、品質として揃えていく。
天然素材の経年変化は、製造工程から始まっている。

ここからが面白いところです。
生地の色は基本的に同じ染料・同じ条件で作られますが、人間が手作業で染料を配合するため、わずかな配合の差や、その時の温度・湿度によって、染め上がりの色が微妙に変わります。同じ釜・同じ日に染めたものは同じ色になりますが、ロットが違えば釜や染める日も変わるため、色味にわずかな差が出ます。
染め以外でも、生地を高密度に仕上げる度詰めのように、製造工程での処理が着込むうちの変化に影響することがあります。繊維がほぐれ、ハリ感が落ち着き、体に馴染んでいく。そういった変化の種は、すでに製造の段階で撒かれています。
つまり天然素材の経年変化は、着始めてから起きるのではなく、製造工程の中にすでに始まっています。着込むほどに表情を変えていく土台は、服が生まれた瞬間からそこにあるのです。
天然素材にはレザーも入ります。革靴やバッグも同じく、なめしや染色という工程を経て、着込むほどに表情を変えていく素材です。
経年変化には、手入れが必要です。

ただ、放っておけば自然に良い経年変化をしてくれるわけではありません。
コットンやウールは洗い方や保管方法によって、変化の仕方が大きく変わります。きちんと手入れをすれば味のある変化に、雑に扱えばただの劣化になる。これは天然素材ならではの話です。レザーも同じです。革靴やバッグも、手をかけた分だけ表情が変わっていく。
化繊のように放っておいても性能が落ちにくい素材とは、付き合い方そのものが違います。手間がかかる分、自分だけの一着になっていく。それが天然素材を選ぶ理由のひとつだと思っています。
フナナカ洋装店
店主


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